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病態生理学
- Pathophysiology

基本情報

学域名 分子生体医学講座 病態生理学
(英語表記)Pathophysiology
代表者 顔写真
教授

大谷 直子
- Naoko Ohtani
場所 学舎 15階
連絡先 TEL:06-6645-3711
MAIL:ohtani.naoko(at)med.osaka-cu.ac.jp
ホームページ http://www.rs.tus.ac.jp/ohtani-lab/ link
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/physiol/ link
概要 研究テーマ①:腸内細菌代謝物が関与する肥満によるがん促進メカニズム
 近年、肥満人口は世界中で増加の一途をたどっています。肥満は糖尿病や心筋梗塞のリスクを高めるだけでなく、様々ながんの発症率を高めることが明らかになっています。
 私たちは、がん細胞周囲に存在しがん細胞を育てやすくするがん微小環境と呼ばれる細胞群や生体内物質の変化に着目して研究しています。最近の私たちの研究成果として、肥満により腸内細菌の構成が大きく変わり、肥満で増えた腸内細菌が産生する物質、デオキシコール酸が肝臓に到達して、組織微小環境を構成する線維芽細胞で細胞老化にともなうSASP(senescence-associated secretory phenotype)という現象が生じ、発がん促進的ながん微小環境に変化する現象を見出しました(Yoshimoto et al. Nature 2013)。この現象は一部のヒトのNASH肝がんでも見られることが明らかになり、臨床研究も行っています。本研究室ではこのマウスモデルを基軸に、肥満誘導性肝がんのさらなる分子メカニズムの解明に迫っていきます。最近増加している肥満にともなう肝臓がんや、加齢にともなう高齢がんを主な疾患モデルとして、遺伝子改変マウスを用いた個体レベルの実験ならびに分子細胞生物学的アプローチを用いて、効果的な発がん予防法の開発を目指しています。

研究テーマ②:細胞老化の機能と役割
 正常な哺乳動物細胞には、異常な細胞の増殖を防ぐための様々な恒常性維持機構が備わっています。このような恒常性維持機構のひとつが、不可逆的細胞増殖停止である「細胞老化」の誘導です。細胞老化はDNAダメージなど発がんの危険性が細胞に生じた場合に発揮される、アポトーシスとならぶ重要ながん抑制機構と考えられています。しかし、アポトーシスとは異なり、細胞老化を起こした細胞はすぐには死滅せず、生体内で長期間生存し続ける可能性があります。最近、細胞老化を起こすと、次第に炎症性サイトカインやケモカイン、細胞外マトリクス分解酵素など、炎症や発がんを促進する様々な因子を分泌するSenescence-associated Secretory Phenotype (SASP)と呼ばれる現象を起こすことが明らかになりました。このことは生体における細胞老化の蓄積が、慢性炎症やがんを進展させる、生体に不利益な微小環境を形成する可能性を示唆しています。
 当研究室ではこのSASPという現象に着目しSASPが生体内でどのような役割を持つのかについて研究を行っています。

研究テーマ③:疲労の科学
 疲労は、私たちに休息の必要性を知らしめ、過剰活動により疲弊してしまうのを防御するための重要な生体警報(アラーム)の一つです。痛み、発熱、疲労といった三大生体アラーム機構の中では、痛み、および発熱の分子神経メカニズムがかなり解明されているのに対し、疲労の分子神経メカニズムに関しては、我々が本格的な研究に取り組む以前は、ほとんど断片的な研究しかありませんでした。そこで、疲労の研究、とくに、疲労の脳科学、および神経-免疫-内分泌相関研究に歩を進め、主に健常者の急性疲労と慢性疲労症候群患者等の疾患関連疲労に関する脳分子・機能・形態イメージング、バイオマーカー、コホート研究より疲労倦怠・意欲低下の分子・脳病態解明につながる多くの成果を挙げてきました。特に、「疲労の脳科学」は特徴的で、脳内炎症・疲労関連神経伝達物質・エネルギー代謝動態、および疲労・疲労感・疲労の条件付け・疲労による意欲低下の神経回路といった疲労の脳内分子動態・神経基盤がみえてきました。今後は、脳分子イメージング研究と脳機能・形態イメージング研究、およびこれら脳イメージング研究の成果と酸化ストレス・自律神経機能・遺伝子多型などとの連関解析による統合的研究を、理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センターなどと共同で推進し、慢性疲労の分子神経メカニズム解明と、平成25年度に新しく設立した大阪市立大学健康科学イノベーションセンターを中心とした介入試験による慢性疲労の予防・治療法の開発・克服を目指して研究を進めて行きます。

教育方針

学部教育

  • 医学生講義(2回生):細胞生物学、脳機能学、血液学、内分泌・代謝学の講義を行っています。
  • 生理学実習(2回生):筋電図・脳波の実習を行っています。
  • 大学院講義(修士課程):細胞老化、腸内細菌の解析法、疲労と意欲の科学、ストレスと脳疾患、脳機能イメージング・分子イメージング 等の講義を行っています。

臨床教育(研修医の育成)

  • 臨床教育そのものではありませんが、基礎医学者がヒトを対象とした健康科学や介入試験を進める際には、必ず、倫理指針や実際の臨床試験・治験登録が必要になりますので、そのような臨床試験の倫理的観点の教育体制等を考慮しています。

研究指導

  • 大学院生や若手研究員に対しては、研究実践マニュアルや、試験デザイン、データ採取、データの取り扱い・解析、論文作成・投稿に至る詳細な資料を作成し、研究が適切に実践できるような環境を整えるとともに、研究テーマに対して自らがよく考え、解決できるように指導しています。
  • さらに、教室教員、研究員、大学院生、学生を対象とした論文抄読会や勉強会を開催し、研究者の育成に取り組んでいます。国内外での共同研究先への短期・長期留学や研究滞在を奨励しています。

研究について

概要

  • 肥満とがん、細胞老化関連
  •  肥満は糖尿病や心血管疾患だけでなく、がんのリスクを上げます。私たちは肥満すると、何故がんが起こりやすくなるのか、という課題に取り組んでいます。そのメカニズムの一つとして私たちは細胞老化にともなうSASPという現象に着目しました(前述)。SASP因子として知られるIL-1ファミリーの一部やIL-6は発がん促進に深く関与していることが以前から知られています。このため、私たちはSASPが肥満に伴う発がん促進に深く関与しているのではないかと考えました。最近、私たちはマウスを用いた全身性の発がん実験系で、肥満によって肝がんの発症が著しく促進されることを見出しました。その分子メカニズムとして、肥満によって増加した腸内細菌の代謝産物デオキシコール酸が腸肝循環によって肝臓に到達し、デオキシコール酸の作用により肝星細胞が細胞老化・SASPを起こし、肝がん促進的な微小環境を形成することが原因のひとつであることを明らかにしました(Yoshimoto et al. Nature 2013)。この肥満にともなう肝がんモデルを用いて、肝がん発症に対する脂質の関与の解明、効果的な予防法の開発など、まだ未解決のいくつかの関連テーマに取り組んでいます。

  • 疲労の科学関連
  •  脳の主要な働きは、生体の生命維持や種の保存に最適な行動をするための情報処理をすることです。しかしながら、生存にとって有利なはずの脳が行う情報処理の不眠不休の継続は、脳や生体の疲労を招き、脳の恒常性・機能維持、さらには生体の生存を大きく脅かすことになります。そこで、脳は、活動・休息・睡眠の3つの状態をバランス良く変遷することでその動的安定性・適応性を維持しています。現在花開きつつある、生体全体の理解に立脚した脳科学・生理学の研究を遂行したいと考えています。また、その成果に立脚した様々な日常生活の上での健康増進ソリューションの開発に向けた研究を平行して行っていきます。

教室を代表する業績

肥満とがん、細胞老化関連

  • Loo TM, Kamachi F, Watanabe Y, Yoshimoto S, Kanda H, Arai Y, Nakajima-Takagi Y, Iwama A, Koga T, Sugimoto Y, Ozawa T, Nakamura M, Kumagai M, Watashi K, Taketo MM, Aoki T, Narumiya S, Oshima M, Arita M, Hara E, Ohtani N. Gut Microbiota Promotes Obesity-Associated Liver Cancer through PGE2-Mediated Suppression of Antitumor Immunity. Cancer Discovery (2017) doi:10.1158/2159-8290.CD-16-0932.
  • Sato S, Kawamata Y, Takahashi A, Imai Y, Hanyu A, Okuma A, Takasugi M, Yamakoshi K, Sorimachi H, Kanda H, Ishikawa Y, Sone S, Nishioka Y, Ohtani N, Hara E. Ablation of the p16INK4a tumour suppressor reverses ageing phenotypes of klotho mice. Nature Communications 6, 7035 (2015)
  • Demaria M, Ohtani N, Youssef SA, Rodier F, Toussaint W, Mitchell JR, Laberge R-M, Jan Vijg J, Van Steeg H, Dollé MET, Hoeijmakers JHJ, de Bruin A, Hara E, Campisi J.
    An essential role for senescent cells in optimal wound healing through secretion of PDGF-AA. Developmental Cell 31,722-33. (2014)
  • Imai Y, Takahashi A, Hanyuu A, Hori S, Sato S, Naka K, Hirao A, Ohtani N, Hara E.
    Crosstalk between the RB-pathway and AKT signaling forms a Quiescence-Senescence switch.  Cell Reports 7:194-207, (2014)
  • Yoshimoto S, Loo TM, Atarashi K, Kanda H, Sato S, Oyadomari S, Iwakura Y, Oshima K, Morita H, Hattori M, Honda K, Ishikawa Y, Hara E, Ohtani N.
    Obesity-induced gut microbial metabolite promotes liver cancer through senescence secretome. Nature 499,97-101 (2013)
  • Takahashi A, Imai Y, Yamakoshi K, Kuninaka S, Ohtani N, Yoshimoto S, Hori S, Tachibana M, Anderton E, Takeuchi T, Shinkai Y, Peters G, Saya H, Hara E. DNA Damage Signaling Triggers Degradation of Histone Methyltransferases through APC/CCdh1 in Senescent Cells  Molecular Cell 45, 123-131 (2012).
  • Yamakoshi K, Takahashi A, Hirota F, Nakayama R, Ishimaru N, Kubo Y, J. Mann D. J, Ohmura M, Hirao A, Saya H, Arase S,Hayashi Y, Nakao K,Matsumoto M, Ohtani N, and Hara E. Real –time in vivo imaging of p16Ink4a reveals cross talk with p53.  Journal of Cell Biology 186, 393-407 (2009)
  • Ohtani N, Imamura Y., Yamakoshi K., Hirota F., Nakayama R., Kubo Y., Takahasi A., Ishimaru N., Hirao A., Mann DJ., Hayashi Y., Arase S., Matusmoto M., Nakao K. and Hara E. Visualizing the dynamics of p21Waf/Cip1 cyclin-dependent kinase inhibitor expression in living animals.  Proceedings of the National Academy of Sciences of USA 104, 15034-15039, (2007)
  • Takahashi A, Ohtani N., Yamakoshi, K., Iida, S., Tahara, H., Nakayama, K., Nakayama, K.I., Ide, T., Saya, H. and Hara E. Mitogenic signalling and the p16INK4a/Rb pathway co-operate to enforce irreversible cellular senescence.  Nature Cell Biology 8, 1291-1297, (2006)
  • Ohtani N, Zebedee Z, Huot TJ, Stinson JA, Sugimoto M, Ohashi Y, Sharrocks AD, Peters G and Hara E. Opposing effects of Ets and Id proteins on p16INK4a expression during cellular senescence.  Nature 409, 1067-70, (2001)

疲労の科学関連

  • Tanaka, M., Tajima, S., Mizuno, K., Ishii, A., Konishi, Y., Miike, T., Watanabe, Y. Frontier studies on fatigue, autonomic nerve dysfunction, and sleep-rhythm disorder. J Physiol Sci, 65(6): 483-498, 2015.
  • Ishii, A., Tanaka, M., Watanabe, Y. Neural mechanisms of mental fatigue. Rev Neurosci, 25(4): 469-479, 2014.
  • Nakatomi, Y., Mizuno, K., Ishii, A., Wada, Y., Tanaka, M., Tazawa, S., Onoe, K., Fukuda, S., Kawabe, J., Takahashi, K., Kataoka, Y., Shiomi, S., Yamaguti, K., Inaba, M., Kuratsune, H., Watanabe, Y. Neuroinflammation in patients with chronic fatigue syndrome/myalgic encephalomyelitis: An 11C-(R)-PK11195 PET study. J Nucl Med, 55(6): 945-950, 2014.
  • Tanaka, M., Ishii, A., Watanabe, Y. Neural mechanisms underlying chronic fatigue. Rev Neurosci, 24(6): 617-628, 2013.
  • Tanaka, M., Watanabe, Y. Supraspinal regulation of physical fatigue. Neurosci Biobehav Rev, 36(1): 727-734, 2012.

主な研究内容

現在の主な研究テーマ

  • がん微小環境におけるSASP因子の役割
概要 私たちはマウスにおいて全身でRasシグナルを活性化する処理をし、高脂肪食を与え肥満させると、肝臓がんの発症が著しく促進されることを見出しました。そして、その発症機構のひとつとして、肥満で増加したグラム陽性腸内細菌の代謝物、デオキシコール酸が腸肝循環を介して肝臓に到達し、肝臓の間質に存在する線維芽細胞の肝星細胞の細胞老化を誘導し、細胞老化を起こした肝星細胞から様々な炎症性サイトカインやプロテアーゼなどが分泌され、細胞老化随伴分泌現象(Senescence-associated secretory phenotype, SASP)が生じ、肝がんに促進的ながん微小環境を形成することが、肝がん進展の原因のひとつであることを明らかにしました。この肝星細胞におけるSASP現象は、ヒトの脂肪肝肝炎にともない発症する肝がん、いわゆるヒトのNASH(non-alcoholic steatohepatisis)にともなう肝がん組織においても認められ、ヒトにおいても、SASPが肥満誘導性肝がんの発症に関与すると考えられます。さまざまなSASP因子のうち、実際にどのようなサイトカインやプロテアーゼが作用し、肝がんを促進・進展させるのか、その分子メカニズムの詳細の解明を目指しています。
  • 肥満誘導性肝がんに対する運動の効果~腸内細菌の変化に着目して~
概要 がんや加齢性疾患を予防する可能性のある取り組みとして、規則的な運動に着目しています。マウスを用いた系で、運動により腸内細菌叢が変化することが明らかになり、腸内細菌代謝物も変化することがわかりました。今後、規則的な運動により、どのような分子や代謝物の体内動態が変化し、がんの発症に影響するか、個体レベルから分子細胞レベルまで検討します。
  • 肝オルガノイドを用いたがん微小環境の3次元構築
概要 近年、組織幹細胞を3次元的に培養する技術、オルガノイド培養技術が開発されました。末梢胆管に存在する幹細胞は、肝実質細胞と胆管細胞の両方に分化する能力があると考えられており、私たちはこの幹細胞のオルガノイド培養を行っています。ヒトの肝細胞癌は未分化な性質を有しているものが多く、肝細胞癌と胆管癌が混在することもあります。この肝オルガノイド培養技術を用いて、脂肪肝や炎症、胆汁酸循環などが影響する肝がん微小環境をin vitroで3次元構築し、肝がんの進展における分子機構の解明を目指しています。
  • 疲労の脳機能イメージング研究
概要 脳磁図で得られる周波数情報と高い時間分解能、磁気共鳴画像(M R I)で得られる高い空間分解能を生かし、慢性疲労者を対象に、疲労、疲労感、疲労の条件付け、疲労による意欲低下のコアメカニズム解明などの基礎となる研究を行うとともに、急性~亜急性~慢性疲労に至る時系列研究、酸化ストレス・自律神経機能・遺伝子多型との連関解析による統合的研究へと進めています。
  • 疲労のPET研究
概要 我々は、CFS患者の前帯状回の前尖部でのセロトニントランスポーター密度の低下を明らかにし、グルタミン酸遊離プールにグルタミン酸を供給するアセチルカルニチンの取り込みの前帯状回、前頭前野、小脳核、側頭葉での低下を発見しました。
また、CFS患者において、脳内炎症マーカーである活性型ミクログリアに発現するTranslocator proteinに特異的に結合するリガンド[11C ](R )-PK11195を用いたPETイメージングを実施し、前帯状回、扁桃体や視床に神経炎症が引き起こされていることを発見しました。今後、[11C ]DASBを用いたセロトニン神経終末、[2-11C]acetyl-L-carnitineを用いたグルタミン酸遊離プールサイズ、[11C](R)-PK 11195を用いたミクログリア活性化、および[18F]FDGによるエネルギー代謝の研究を、慢性疲労者や関連疾患患者を対象として実施します。
疲労度スケールの導入後は、ヒト特有の疲労度の個人差を考慮し、慢性疲労の重症度とセロトニン・グルタミン酸系低調、脳内炎症、エネルギー代謝低調の程度との相関解析を行い、酸化ストレス・自律神経機能・遺伝子多型の連関解析による統合的研究、急性~亜急性~慢性疲労に至る時系列研究、および介入研究につなげる研究を進めます
  • 抗疲労介入研究
概要 平成25年度に新しく設立した大阪市立大学健康科学イノベーションセンターなどと共同で、介入試験による慢性疲労の予防・治療法の開発・克服を目指して研究を進めています。

臨床への取り組み

臨床への応用のためには、まず揺るぎない基礎医学の基盤を固めることが重要である。またヒトを対象とした健康科学やソリューション候補を用いた介入試験を進める際には、基礎医学の基盤を固めた上で、臨床研究、臨床試験、時には、臨床治験を行う。

スタッフ

教授 大谷直子
講師 田中雅彰

参考写真

講座一覧

あべの医っちゃんねる